地域で子どもに関わる専門家に『子ども』に
ついて教えてもらうシリーズです。
Vol.1 たかまつこどもクリニック 高松 勇院長
これまでたくさんの子どもを診てきて感じることは
『子どもの通常の病気の大多数は自然に治るもの』ということです。
子どもには、通常の風邪であれば、1週間くらいかけて自分の力で
ウイルスなどとたたかって治す力が備わっています。
鼻水や咳で苦しそうな様子をみると、すぐ止めてあげたい、
と思うかもしれませんが、咳はウイルスと身体がたたかって
攻防しているから出る症状で、
嘔吐や下痢はお腹で炎症を起こしているからそれ以上食べてはダメ、というサイン。
弱った胃腸を守るための症状なんです。
だから、お腹にあわせた飲み方、食べ方をしてあげて、
その症状に付きあいながら治るのを待つ、という感じです。
熱もそう。無理に解熱剤などで下げるほうが治るのに時間がかかることも。
しっかり自分の力でたたかうのを見守ってあげることが大事です。
もちろん高熱が続いたり、ぐったりしている、呼吸が苦しそう、
顔色が悪い、うとうとして目覚めない、いつもと違って非常に重症そうにみえる、など
治療が必要な場合もありますから、受診は大事です。
クリニックの小児科医の仕事は、その見立て、つまり治療が必要かどうかをみることだと思っています。
子どもの異変に気づくために
たくさんのお母さん(お父さん)が
「うちの子の様子がおかしいんです」と言って来られます。
そのときの「ちょっとおかしい」「いつもと違う」という感覚は
すごく意味があります。このお母さんの感覚はほぼ当たっていて、
大事にしないと、といつも感じています。
異変に気づくために日頃注意してみておく大切な1つのポイントは
「息づかい」ですね。
服を着替えるときなどに、寝かせて裸の状態でお腹や胸をみるんです。
どんな風に呼吸をしているか、をチェックしておきます。
通常、1分間に乳幼児で約30回、小学生くらいで約20回呼吸します。
その回数を一度はかっておくのをおすすめします。
風邪でしんどいときは呼吸があさく、早くなります。
通常の呼吸を知っておくことで、異変に気づける、というわけです。
肋骨の間や、鎖骨の上がへこむ、というのも同じ。
日頃から子どもの身体に触れて、体温や身体の様子を感じておくと、
異変には気づきやすいと思います。
あとは周囲に関心を持って遊ぶ、おっぱいを飲む、ご飯を食べる、
活動的に過ごすということができなくなっている=病気のはじまり、と考えていいでしょう。
熱が出ているか、よりも今挙げたポイントをしっかりみてください。
そこがクリアできていれば、少々熱があってもゆっくり様子を見て大丈夫なことが多いです。
子どもは病気をしながら育つ
最近の風潮として病気をさせたらダメ、うつしてはダメと
思いすぎじゃないかな、と思うこともあります。
『子どもは病気をしながら育つ』んです。
お母さんからの免疫がなくなる6か月過ぎくらいから、
2か月に1回くらいは熱を出すもんだと思っていてもいいかもしれません。
保育園に入園したら、毎週熱がでることも。かかっては治り…を繰り返し、
夏風邪、秋風邪、冬を越して1年を経験し、
2年目くらいから落ち着いていく、そんなもんじゃないでしょうか。
病気をうつしたりうつされたりしながら、
自分の力で乗り越え免疫をつけていくことが、強い身体を作ってくれるんです。
できるだけ子どもの生活リズムや歩みに寄り添って、
それぞれの子育てを楽しんでいただければ、と思います。