さまざまなところでジェンダーレスの動きが進んでいます
大学で教鞭を執るかたわら、女性のマネジメントや育成に関する研修も多数実施している岩田千栄美さん。その知識や経験をどう子育てにも生かしているのか、岩田さんが日々考えていること、子どもに伝えていることを教えていただく企画です。
大阪市生まれ阿倍野区在住。大阪市立大学(現大阪公立大学)大学院 創造都市研究科 博士課程 満期退学。女性のマネジメントや育成に関する研修やセミナーの実績多数。桃山学院大学ビジネスデザイン学部(桃山学院中学高校となりに2020年9月開設)特任講師。中2と小5の2児の母。
LGBTを取り巻く議論
2021年5月、LGBTなど性的少数者への理解増進法案をめぐる議論がまとまらず、法案提出が見送られたことがニュースになりました。それから2年。ちょうど同じ5月に、またLGBT理解増進法案をめぐって激しい議論が起きました。争点の1つは「差別は許されない」という表現にあり、それぞれの立場で主張が繰り広げられました。
性別にはグラデーションがあるという考え方
性別に関して、社会の仕組みやルールの多くは「男/女」という2つの区分を前提にしていますが、学術的に性別はSOGI(ソジ)という考え方をします。“Sexual Orientation Gender Identity”の頭文字を取ったもので、性的指向(どの性別を好きになるか)と、性自認(自分の性別をどう認識しているか)の2つの軸で捉え、グラデーションがあり(はっきりと固定されるものではない)、途中で変化することもあると言われています。
社会の中の生きづらさ
冒頭の法案の話に戻ると、差別があるかどうかはさておき、男女の2区分を前提にしている社会の狭間で「生きづらさ」を感じている人たちがいるのは確かだと、私は思います。性的少数者に限らず、制度やルールは何かを基準にして作らざるを得ないため、その狭間ではどうしても「生きづらさ」が生まれてしまうのではないでしょうか。
さまざまなところで進むジェンダーレス
Tinder(ユーザーの60%が10~20代のマッチングアプリ)では、プロフィール登録時に性別も性的志向も細かく設定できるようになっているそうですね。性的指向は9つの選択肢から3つを選んで登録するらしいので、最大で84パターンになる計算になります。
学校現場ではジェンダーレスの制服や体操服・水着が導入されたというニュースをちらほら聞くようにもなりました。ランドセルの色も以前は「男の子は黒、女の子は赤」が当然のように浸透していましたが、今では随分、色の種類も増えましたよね。
また、世界大手玩具メーカーのLEGOは、商品に「男の子向け/女の子向け」という区分をなくし、情熱や興味関心で区分するようになっています。玩具販売大手のトイザらスも、売り場の棚を「男の子/女の子」で区別することを廃止したことがニュースになりました。 若い世代はこうして実際のサービスの中でSOGIの考え方を前提に生きているのかと思うと、親世代の意識をアップデートしていく必要を感じます。
どんな服を着たいか、何色が好きか、どんな遊びが好きか。そうした1つ1つの選択を「男の子だから」「女の子だから」で誰かに決められるのではなく、本人の望みが叶うことが一番重要ではないでしょうか。もちろん、多くの人が関わる社会的な部分においては、全ての人が満足する方法を見い出すのは難しいですから、誰しも少しずつ我慢しなければいけないとは思います。しかし、誰かの自由を脅かさない範囲で完結することであれば、本人が好きなものを選択できる社会がいいのではないでしょうか。「何が好きか分からない」よりはよっぽどいい、と私は思います。
★おすすめ映画★
「彼らが本気で編むときは、」
トランスジェンダーの女性(生田斗真)とその恋人(桐谷健太)、孤独な小学生の3人が主役の映画。2017年公開。