リケジョが学ぶ環境が少しずつ整ってきています
大学で教鞭を執るかたわら、女性のマネジメントや育成に関する研修も多数実施している岩田千栄美さん。その知識や経験をどう子育てにも生かしているのか、岩田さんが日々考えていること、子どもに伝えていることを教えていただく企画です。
大阪市生まれ阿倍野区在住。大阪市立大学(現大阪公立大学)大学院 創造都市研究科 博士課程 満期退学。女性のマネジメントや育成に関する研修やセミナーの実績多数。桃山学院大学ビジネスデザイン学部(桃山学院中学高校となりに2020年9月開設)特任講師。中2と小5の2児の母。
「リケジョ」を増やしたい日本
突然ですが、「リケジョ」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。理系女子、略して「リケジョ」です。日本政府は数年前から「リケジョ」を増やそうと頑張っています。つまり、理系に進む女の子を増やしたいと考えているのです。それはなぜか。
科学者や技術者、医師など理系の職業において、女性の割合が低いからです。例えば、日本の「お医者さん」はおよそ男性が8割・女性が2割です。アメリカでは女性医師の割合が約3割、フランスやイギリス・ドイツは約4割なので、日本は女性医師が少ないことが分かります。
理系の職業に女性を増やすためには、まずその分野に進む学生の女性割合を高める必要があります。
なぜ「リケジョ」を増やす必要があるのか
理系の職業に女性が少ないことは女性全般のQOL(Quality Of Life:生活の質)に影響を及ぼします。例えば、先ほど例に挙げた「お医者さん」の世界の話しです。約20年前にある女性医師が、病気になったり症状が悪化したりする原因が性別によって異なることを踏まえて診断や治療を行うべきだと訴え、そこから「性差医療」という考えが登場しました。
また、今年8月に発表された研究結果では、同じ産婦人科医でも女性医師と男性医師ではPMS(生理前のつらさ)の治療方法が異なることが分かりました。医学だけではなく、工学や科学の世界でも同じようなことが起きており、「リケジョ」の重要性が高まっています。
学ぶ環境が少しずつ整っています
冒頭の法案の話に戻ると、差別があるかどうかはさておき、男女の2区分を前提にしている社会の狭間で「生きづらさ」を感じている人たちがいるのは確かだと、私は思います。性的少数者に限らず、制度やルールは何かを基準にして作らざるを得ないため、その狭間ではどうしても「生きづらさ」が生まれてしまうのではないでしょうか。
さまざまなところで進むジェンダーレス
最近は、リケジョを増やすために女の子向けに無料のセミナーやワークショップが開催されることも多くなりましたし、メルカリの創業者は理系に進む女の子のための奨学金制度を創設しました。女の子をお持ちの保護者の方には、少しアンテナを張ってもらえると嬉しいです。
リケジョの調査では、学校で数学や化学・物理など理系科目に女性の先生がいたという結果も多く、ロールモデルを「見せる」ことも大切だと感じています。
また、子どもが進路を選択するとき、親の価値観が強い影響を与えることが研究によって分かっています。「子どもが好きな道を選べばいい」と思っていても、何気ない言動の中に保護者自身の無意識の価値観が潜んでおり、それが知らず知らずのうちに影響を与えますので、言動には十分に気をつけたいものです。